生翠 seisui - 舟醒 shusei’s diary

書画のあれこれエトセトラ

現代書「前衛」

皆様こんにちは。
いよいよ4月に入りました。
朝晩はまだ肌寒いですが、昼間はとても暖かく初夏に向かって季節が移ろうのを感じます。
写真は三椏の花で甘い香りがします。
和紙の原料にもなり、そのせいかお寺さんではよく見かけます。

f:id:Seisui_Shusei:20210403205121j:plain

枝が必ず3つに分かれていることからこの名がつきました。
どういう訳か下を向いて咲くのが少し勿体ない気もします。

さて、私が所属しております大日本書芸院では、月の課題に「前衛書」があります。
前衛書とは美術の世界でも“前衛”というジャンルが有るように、書世界にも戦後に起こった革命と言いますか。
書と画(絵)の融合、つまり文字の非文字化、より絵画的に表現することを目指しました。
その後も更に文字の抽象化が進み、墨象へと発展していきます。
またデザイン書やアート書等とも呼ばれる古典をベースにした、装飾的文字も表現として確立していきました。
お酒のラベルや店舗の看板、よく見られるのは大河ドラマの表題の筆文字等がそれにあたります。

前衛
f:id:Seisui_Shusei:20210403211057j:plain

より立体的に滲みを何層も出す
f:id:Seisui_Shusei:20210403211400j:plain

大日本書芸院の前衛書はわりと初期、創成期の前衛書にあたり、草書を主体とし滲みや掠れを活かして、より立体的に表す表題方法を取っています。
青墨に茶墨を少し入れることで青味により深みを持たせると同時に、滲みにも複雑な色合いを醸し出します。
この調墨が難しく、また磨り方にもよっても様々な色合いになります。
更に滲みは紙の暑さ、水分量にも左右されるので、どの組み合わせを取るかで無数の表現ができます。
水分量と言えば古紙は古紙なりに、そしてお天気でもグッと変わっていきます。
当然ながら雨は恵みの雨となり、自然に紙に水分が馴染んでいきます。

f:id:Seisui_Shusei:20210403213932j:plain

以前に失敗したのは調墨した墨に少し水を足して淡墨にするのに、水を入れ過ぎてしまい滲みが出なかった事があります。
ついうっかりとしていました…
お天気にも左右される前衛書は奥が深く、それでいてとても楽しい、探究心をそそられる書体です。


創始者「阿部翠竹集」より

f:id:Seisui_Shusei:20210403214210j:plain

f:id:Seisui_Shusei:20210403214345j:plain



生翠