生翠 seisui - 舟醒 shusei’s diary

書画のあれこれエトセトラ

墨を磨るということ

皆様こんにちは。
すっかり秋めいてきて、もうすぐ秋分の日、秋のお彼岸です。
だんだん涼しくなってきて、過ごしやすくなってまいりました。
お散歩にも良い季節になり、お手掛けもしたくなりますが…今月末までは緊急事態宣言のため大人しくしていましょう。

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さて、11月に同じ大日本書芸院所属の玄愁先生と、銀座にて二人展を開催します。
その作品作りに追われております。
作品を書くにあたり、毎日、墨を磨っております。
墨汁とどう違うの?と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
墨には大きく分けて油煙墨と松煙墨とあり、多少色が違うのです。
松煙墨とは字の通り、松の煤を原料に使い膠と香料を練って作ります。
油煙墨は松煙墨以外の墨を言い、菜種、桐、胡麻等の煤を原料にしています。

最近の煤は殆どがカーボンブラック、鉱物油の煤を使い、染料を入れて色を作り出しています。
松煙墨、青墨は淡墨(水で薄めた墨液)にすると、灰がかって見えます。
これを“青”と表現し、青墨と呼びます。
青墨も松だけでなくとも作れますが、大抵は松です。

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松煙墨に更に藍を入れて、より青くしたものもあります。
こちらは書よりも画向きでしょうか。
松煙墨にも沢山の種類があり、松も赤松枯木や、松の産地に拘っているものもあります。

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油煙墨は濃墨で、より黒さを出したい作品にはぴったりです。
胡麻などは黒さが際立ち、引き締まった作品の仕上がりが期待できます。
故に墨汁にも作品用に紫紺系や青墨があるのです。

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墨を磨ると疲れる…と、子供の頃の体験で嫌な思い出の一つになっていることと思います。
ですが本来ならば、これから書くのに疲れてしまっては意味がなく、疲れないものなのです。
勿論、大きい作品を書くのに大量に磨らないとならないことがあり、そういう場合は墨磨り機があります。
自動で磨ってくれるスグレモノです。

墨汁を使わずに墨を手で磨る…

私にとっては至福の時間でもあります。
きちんと作り込まれた硯で磨る墨は、何の力も要らず、撫でるように滑らせるだけであっという間に墨液になります。
また、香料の良い香りに包まれて、一種の瞑想のような雰囲気を味わえます。

私のお教室の生徒さんも「ずっと磨っていたい…」とうっとりとしています。
そんなに何時までも磨っていると、濃墨になってしまいます。
濃墨の書き方もあるので、普段書くには濃墨程には磨りません。

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少量のお水を墨堂にさして、ゆっくりと磨っていきます。
ついウトウトしてしまいそうになる程に、ゆったりとした時間が流れていきます。
良い硯と墨ならば30秒もかからずに、これくらいの水量であれば墨液が出来てしまいます。
昔、お手紙や何か書きとめる場合など、今すぐ書かなくてはならない時に、ささっと磨れなくては文房具の意味がありません。

墨池いっぱいに磨るのは、多少の時間はかかっても疲れる事はありません。
それよりも書く前に心を落ち着けて、書く前の心構えと言いますか…気持ちを作品に持っていく、集中力を高めるにも墨を磨るという作業は、必要なのではと考えます。

硯と墨の組み合わせでも、色んな色を出す事が出来ます。
松煙墨向きはこの硯、油煙墨向きはこの硯、またはこの銘の墨はこの硯、と組み合わせは沢山あり目指す作品で変えることも出来ます。
前衛書では青墨、松煙墨に少しの油煙墨を調墨して、作品を創っていきます。
そうした表現の幅が出せるのも、墨を磨る事の一つの理由です。

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